【記事の内容】
・落ち込んでいる人の状態
(ストレスを抱えやすい性格,ストレス時の脳の構造)
・感情の変化の流れについて
・傾聴のポイントや気を付けたいこと
元気がない人に対して周りが出来ること
落ち込んでいる人の「力になりたい」と思い、良かれと思って励ましやアドバイスをすると、逆に多大なストレスがかかります。それは、苦悩を抱えている段階では、まずはつらさを理解してほしいからです。落ち込んでいる人が相談相手に求めるのは、「自分のことを理解してくれる人」です。
話がすれ違い、「話しても無駄」「分かってくれない」と思われてしまうと、心を閉ざしてしまいます。
相談相手に求めるのは、自分のことを理解してくれる人
相手に「理解者だ」と思ってもらうことは、非常にハードルが高いです。なぜなら言葉だけでなく、背後にある様々な意図や思いを考えなければならないからです。
しかし、事前に相手の状態を知っていたり、自分が傾聴力(カウンセリングの一種)を身に着けていると、胸の中を打ち明けてくれる機会が増え、コミュニケーションが円滑に進みます。
落ち込んでいる人の状態
【ストレスを抱えやすい人の特徴】
執着性格
・仕事熱心 ・凝り性 ・徹底的 ・正直 ・几帳面 ・正義感が強い ・責任感が強い (参考:下田,1950) |
メランコリー親和型
・秩序を重んじる ・他人に気を遣う ・断れない ・真面目 ・正直 ・仕事熱心 ・消極的,保守的 (参考:Tellenbach,1961) |
(参考:上島国利:4,うつ病の病前性格,実施医家が知っておきたい抗うつ薬の知識と使い方,改訂2版,ライフ・サイエンス:6,1999)
執着性格やメランコリー親和型性格はストレスを抱え込みやすく、うつが発症しやすいといわれています。普段はストレスにならないことでも、積み重なると多大な精神的エネルギーを必要とするのでキャパオーバーが生じやすいです。
【脳の状態】
①強い心理的ストレスが加わると、海馬(脳)の神経細胞が徐々に減っていくと報告されています(細胞の脱落や萎縮)。
(参考:神庭重信:ストレスから精神疾患に迫る: 海馬神経新生と精神機能,日薬理誌(Folia Pharmacol. Jpn.)128,3~7(2006))
神経が減ると、正しい情報処理ができなくなってしまいます。こなせる量や速度が落ちてしまいます。すると、「なにやってもうまくいかない」と負のスパイラルに陥ります。
②海馬の他に、感情や行動をコントロールしている前頭前野(脳)にも影響が出ると分かってきています。
(参考:小山文彦:労働者の抑うつ,疲労,睡眠障害と脳血流変化,(日職災医誌,58:76-82,2010))
前頭前野の機能が弱まると、不安を感じやすくなったり、怒りやすくなったり、イライラしやすくなったり、暴飲暴食・お金の浪費など普段は抑えている衝動に負けてしまいます。
いつもと様子が違う人がいたら、早めに声をかけ様子をみましょう。
話の内容として、出来ていないことではなく、出来ている事に着目する必要があります。
メンタルヘルス不調の症状・対処法については、下記のブログに記載しています↓

感情の変化の流れについて
(図:発達障害の家族支援における「障害受容」 その概念の変遷を巡って ,Japanese Journal of Applied Psychology 2018, Vol. 44, No. 2, 131-13)

悲しい出来事が生じると、まずショック状態となり、否認が起き、悲しみと怒りの感情の時期を経て、適応、再起へと段階的に感情の変化が進んでいくといわれています。
ショック→否認→悲しみと怒り→適応→再起
ショック→否認→悲しみと怒りまでは、人に対して攻撃的になったり、混乱したり、落ち込んだりしやすいです。落ち込んでいる人が相談相手に求めるのは、「自分のことを理解してくれる人」です。こころにある悩み事や心配事、苦しみ、後悔などの気持ちを打ち明けられるように配慮する必要があります。
注意するべきことは、励ましやアドバイスをすることです。励ましやアドバイスは、相手に対して多大なストレスをかける可能性があります。
話をしたくないと思っている人には、無理して話そうとせず、リラックスできる環境を整えましょう。ストレス緩和方法については、下記のブログに記載しています↓

時間の経過とともに、適応・再起に移行すると、「自分で努力しないと。落ち込んでいてはいけない。」と悟り、気持ちを切り替えて行動し始めます。悲しい出来事も「自分の個性の一部」として、自分を認めることができ、気持ちの整理が出来てきます。新たな視点から自分を見直すきっかけとなり、自分を取り戻し始めます。すると、悲しい出来事を自ら話の話題にしたり、新しい役割を求めて活動をするようになります。
小さな成功体験の積み重ねが、自信となり、より一層こころの回復に繋がります。
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傾聴のポイントや気を付けたいこと
話し手が聞き手に与える印象の93%は、言葉以外の態度(非言語的コミュニケーション)です。身振り・表情・目線・声のトーン・話のスピードに配慮すると、円滑なコミュニケーションが生まれ、「話してよかった」と相手に良い印象を与えることができます。これをメラビアンの法則といいます。
話すときは、非言語的コミュニケーションを意識する。
傾聴のポイント
オープンクエスチョンで、相手にたくさん話してもらう。 例えば、「困っている?」と質問すると、「困っている(YES)」「困っていない(NO)」と、2択の返答があるかと思います。これはクローズドクエスチョンといいます。 そこで、「今一番、困っていることは何?」とオープンクエスチョンで質問してみると、返答の選択肢が広がります。オープンクエスチョンであると、話したいと思っていることを話せ、会話が発展していきます。また、相手に考えさせることができ、新たな発見が見つかる事もあります。 |
よく聴く 言葉だけでなく、背後にある様々な意図や思いに関心を持ちながら、注意深く話を聴きます。相手の思いや発言の意味がよくわからない時は素直に聞きなおすと、「ちゃんと聞いてくれている」と相手に安心感を与えることができます。うなずき・相槌・目を合わせる・相手に身体を向けるなどの非言語的コミュニケーションも意識しましょう。 |
沈黙を受け入れる 沈黙は、何かを考えていたり、心の整理をしたり、気持ちがいっぱいになっているときです。相手にとって「何を喋らなくても良い」状態は、心地良いと感じることもあり、そばにいるだけで安心感があります。 |
共感する 共感とは、相手の心情・背景を汲み取り、思いやりの気持ちを持つことから生まれる相手に寄り添う言葉です。相手の話を否定・批判せずに、丁寧なコミュニケーションを行いましょう。話の中で共感する部分があれば、言葉で表現すると、「自分の心情を理解してくれている」と良い印象を与えることができます。言葉だけでなく、態度でも共感を表現することも大切です。 |

最後までご覧いただきありがとうございました。